
高齢者の方の中には、急に食事をとれなくなったという人がいらっしゃいます。高齢になると誰でも何らかの疾患や身体機能の低下がありますので、おいしく食事がとれなくなることもあるようです。
今回の記事では、高齢者の方が急に食べられなくなったときの原因と対策方法について紹介していきたいと思います。
目次
高齢者の方が食べられなくなる原因
食べられない原因は、人によって様々です。しかし急に食べられなくなるには、何らかの原因が潜んでいるものです。
まずは考えられる原因5つを見ていきましょう。
カラダの不調
普段の生活で見ていると、次のような不調が出ていることはないでしょうか。
・発熱
・脱水症状
・ぜいぜいと呼吸している
・カラダがダルそう(倦怠感ですね)
・胃の調子が良くない
・腸のあたりが張って苦しい
・食道に胃酸が逆流してくるのでつらい
このように、食欲が低下する原因で多いのはカラダの不調です。
カラダに不調を感じると、年齢に関係なく食欲が湧いてこないものです。食べることが面倒に感じ、食への興味も低下してしまうのが普通です。
高齢者の場合、若い世代よりも体力や筋力が低下していますから、ちょっとしたカラダの不調でもしんどくなり、食欲も低下してしまうのです。
嚥下障害
飲み込むことが難しくなると、むせてしまうことが増えてきます。誰でも一度くらいは食事をしていて「むせた」という経験があると思いますが、あの感覚は非常に苦しくてつらいものです。
もし、あの経験が毎回の食事で1度、2度と起こるとすると、楽しく食事をしようと感じるでしょうか。
まず、苦しい思いをしながら食べることに億劫になることは間違いありません。これは高齢者の方も同じですし、高齢になることで喉や首の筋肉、噛む力やのみこむ力が低下し、より「むせる」機会が増えてしまうのです。
こういった理由で「むせることが増える=嚥下障害」の方は、本当は食べたいけれど苦しい思いをしたくないので、食べられなくなったという方もいらっしゃいます。
お口のトラブル
残っている歯が少ない。入れ歯が合っていない。歯がグラグラ動く。どの状態であっても口に入れたものを噛むことができません。
噛むことができないと、のみこむことも難しくなりますので、楽しく食事をすることができなくなります。
カラダの調子は定期検診などでわかるのですが、お口の健康状態は見過ごされがちです。
「カラダは元気そうなのに」という場合は、お口のトラブルで食べられなくなっているかもしれません。
認知症
食事を取れなくなった原因として、最近増えているのが認知症です。
認知症によって食べ物を認識できなくなり、どうして良いのかわからないまま食べられなくなったということもあるようです。
認知症の初期の頃ですと、本人も家族もわかっていないため「最近ご飯を残すようになったな」というだけで見過ごされていることもあるでしょう。
本人としては食べ物かどうかわからないので、混乱してじっとしているということもあります。
うつ
うつになると、気分が落ち込むことで倦怠感、不眠を経験し、なにもしたくないという気持ちが強くなると食欲不振が起こる可能性もあります。
また、先にお話しました「認知症」と「うつ」を見極めるのは大変難しいため、どちらとも言えないまま「食べないな」というだけで終わってしまっていることもあるでしょう。
高齢者における食事の重要性
私たちは毎日、生きるために必要な栄養を摂取しています。多くの方の場合、栄養を摂取する方法として食事は切っても切り離せません。
これは年齢に関係なく、何歳の人でも同じことです。
食事の役割を知ろう
特に高齢者の方には食事の役割について知っておいていただきたいと思います。
食事をすることで、1日のリズムが整います。食事をすることでカラダが目覚めて気持ちよく活動することもできるでしょう。
また、食事は人生の中での楽しみの一つでもあります。特に入院経験のある方なら、病院での食事は楽しみの一つですし、お家に帰ってからの食事は特別なものと感じられているのではないでしょうか。
また、食事をすることで家族やパートナーとの会話も弾み、生活の中に潤いを与えてくれる瞬間でもあります。
食べる量は環境で変わる
あなたも経験があると思いますが、一緒に食事をする人数が増えると食べる量が変わることはないでしょうか。
お正月やお盆に親族が集まったとき。会社勤めをされている方なら、仕事の打ち上げで同僚が集まったとき。普段よりも食べる量が増えていることでしょう。
このように人は、食事をする環境によって食べる量が変わります。明るい部屋で楽しい雰囲気なら、誰でもしっかりと食事をすることでしょう。
反対に薄暗い部屋で、誰も話もしないような雰囲気なら、ササッと食べて終わりという味気ないものになってしまうことが想像できます。
高齢の方の場合、どうしても一人で食事をする機会が増えてしまいますし、家族と一緒にいても話が聞こえにくいため、一人で食事をしているのと変わらないということもあります。
また、最近では家族それぞれの生活時間が違っているため、家族がそろって食事をすることが難しいお家もあることでしょう。
できるだけ、高齢者の方の「食べなくなった」を防ぐためには、食事の環境にも注意してもらいたいと思います。
最も注意したい低栄養
高齢者には「粗食」が一番という話、聞かれたことはありませんか?
確かに高齢になると、動くことは減ってきます。また何らかの疾患を持っている方も増えてくるので、食べ過ぎは良くありません。
しかし、このような考えだけにとらわれると、楽しく健康に生活するために必要な栄養が不足してしまうこともあるんです。
これを「低栄養」と呼びます。低栄養は高齢者にとっては、様々な病気を引き起こす原因にもなり得ます。
栄養が低下すると抵抗力も下がりますので、風邪やインフルエンザにもかかりやすくなります。
低栄養が続くと、筋肉の量や力が低下し、
・歩く
・立つ
・座る
ということが難しくなります。そしてカラダに倦怠感を覚える、寝ている時間が増えてしまい、症状が進むと「寝たきり」という、本人にとっても家族にとっても歓迎したくない状態になることもあります。
低栄養と3つの症状
このように低栄養は、高齢者にとって気をつけておかなければいけないことです。
そこでこの章では、低栄養によって起こりやすい3つの症状についてお話していきます。
サルコペニア
名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。サルコペニアとは、低栄養によって進行する骨格筋量の低下です。
骨格筋量の低下によって、歩くことがつらくなったり、握力が低下したりする人もいます。
歩く速度も遅くなるため、出掛けることが億劫になるのも理解できます。
また、状況によっては転倒を起こす危険性もあります。
フレイルティ
この言葉も最近聞くことが増えてきました。フレイルティとは「転倒や疾患によって障害を抱える一歩手前」の段階と言われています。
この時点で正しく支援することで、症状や病状の進行を遅らせることができるポイントであり、改善できる可能性を持っている状態だと言えます。
特に運動や日常生活の指導に影響する、食事による栄養補給は、フレイルティによる病気やケガのリスクを少なくすることができます。
カラダの機能は年齢と共に誰もが低下していくものです。しかし低栄養に気をつけておくことで、低下の流れを長くゆるやかなものに変えることもできるでしょう。
ロコモティブ
自治体や病院でも目にすることが増えた「ロコモティブ」。
骨格だけではなく関節なども含めて運動機能が低下し、外出などが行いづらくなる状態です。
普段の運動や栄養補給に注意することで、筋力や関節なども動きやすく丈夫な状態を維持することができますので、ロコモティブ症候群の予防につながります。
元気で暮らすための食のポイント
健康で長生きするためには、無理な粗食ではなく必要な栄養を摂取することです。ここでは元気に暮らすための食のポイントをお伝えします。
気をつけたい基本的なこと
少し前までは、健康で長生きの秘訣は「糖尿病」「脳梗塞」を防ぐこと。仮になったとしても「合併症」を防ぐことがポイントと言われていました。
そのため、野菜中心で粗食が良いという話もあります。しかし昨今の研究では、野菜中心の粗食では健康に直結する内臓や筋肉を維持するために必要なエネルギーが摂取できないと言われています。
特に高齢者の方は、筋力を維持することができないとサルコペニアの進行が始まる可能性もあります。
そこで次からお話する「たんぱく質」「水分」が重要になってきます。
たんぱく質も取ろう
筋力の低下を予防するには、たんぱく質が必要です。そこで一般的な日本人には、下の表に載っている量のたんぱく質が1日に必要だと言われています。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
年齢 | 推定平均量 | 推奨量 | 目標量 | 推定平均量 | 推奨量 | 目標量 |
50~69歳 | 50g | 60g | 13~20g | 40g | 50g | 13~20g |
70歳以上 | 50g | 60g | 13~20g | 40g | 50g | 13~20g |
出典:厚生労働省~日本人の食事摂取基準(2015年版)
URL:https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
カラダの調子や病気の治療などもからんできますので、上の数字はおおよその基準値として利用し、細かな数値は主治医に教えてもらうようにしましょう。
水分補給も大切です
健康を維持するためには、適度な水分補給も必要です。腎臓病などを患っておられる方の場合は、主治医と相談された制限内で水分補給を行うことが大切です。
いっぽうで健康な方の場合は、低栄養を防ぐために食事をきちんと取ることに加え、尿の排泄量に合わせた水分を補給することが大切です。
では、実際に1日でどれくらいの尿が排泄されているのかというと、正確に測定することは簡単ではありません。
ぜひ大まかな数字でかまいませんから、主治医に相談し計算してもらってください。あなたに合った量を補給することで、健康な状態を維持できるでしょう。
低栄養を防ぐ食対策
高齢者の低栄養を防ぐ対策についてお伝えしていきます。
次の3つのケースが多いと思いますので、自分や家族に照らし合わせて読み進めてください。
自立している人も注意
高齢者がひとり暮らしをしている場合、本人も家族も自立できていると考えます。
カラダも健康で買い物にも一人で行けますので「自立」していることは間違いではありません。しかし、いくら自立していると言っても高齢であるため、
・買い物へ出掛けるのが面倒
・お米や牛乳など重いものを持てない
このような理由から、気がつくと栄養価の低い「パン」や「菓子」を食べることが増えているかもしれません。
このような食事を続けると、低栄養になる可能性が高くなります。
本人がお住まいの地域包括支援センターに相談し、重いものは配達してもらえるお店がないか確認しておくことで解決することができるでしょう。
負のスパイラルを作らない
次のような負のスパイラルになることがあります。
食べる量が減った
↓
低栄養で体重減少
↓
カラダ全体の体力が低下
↓
噛む、のみこむ力が低下
↓
食事でむせることが増える
↓
食事がつらい
↓
食べる時間が長くなる
↓
疲れるので食べたくない
↓
食べる量が減る(最初に戻る)
負のスパイラルは、最初の「食事の量が減った」ときに対策するのがポイントです。
まずは1日に必要なタンパク質を摂取してもらうことから始めましょう。
放置しておくと低栄養が進み、そのうち「寝たきり」のはじまりになる可能性を含んでいます。
お口のケアにも意識しよう
見逃されやすいのが「お口のケア」です。
噛めない、飲み込めないのは筋力ではなく「噛み合わせ」の問題かもしれません。
・食べる速度が急に変わった
・食べられないと残すようになった
・飲み込むまでに時間がかかるようになった
こういった場合、「食が細くなったんだろうな」と感じるかもしれませんが、まずはお口のケアに注意してください。
お口のケアをすることで噛み合わせもスムーズになり、おいしく食事ができますので低栄養を防ぐことができます。
まとめ
高齢者の方が急に食べられなくなると、低栄養になってしまい健康な状態を維持しにくくなります。
そこで普段から気をつけておきたいことは本文でもお話しましたように、栄養価の高い食事を無理なく取ることなのです。
ご家庭で栄養素や塩分などを計算し食事を作られるのが一番ですが、1日3食を毎日するのは大変です。
そんなときには、栄養や塩分、また食べ物の硬さにもバリエーションのある宅配弁当を利用するという方法があります。
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