
皮膚は人の体の表面をおおっていて、外部の刺激から体を守っています。また、脳は皮膚からいろいろな感覚を受け取って認識していて、皮膚の健康は全身の健康とかかわっているともいえます。皮膚にいいといわれる食べ物と栄養についてまとめます。
皮膚の構造と働きとは
皮膚は水分の損失や透過を防いだり、体温の調節、外部からの刺激や微生物の侵入を防御したり、物理的・化学的な刺激から体を守るなど、人の生命を維持するためになくてはならない機能を担っています。
皮膚は大きく分けて3層に分けられます。一番上の、体の最も外側が「表皮」、その下が「真皮」、皮膚の最下層を「皮下組織」といいます。
表皮の構造と働き
とても薄い膜である表皮は主にケラチノサイト(角化細胞)からなり、4つの層からできています。皮膚の奥から表面に向かって基底層→有棘(ゆうきょく)層→顆粒層→角層と、細胞が積み重なっています。基底層から細胞分裂しながら分化して細胞を押し上げていき、最終的には「垢」となって角層からはがれ落ちていきます。このように、表皮を構成している細胞が生まれてからはがれ落ちるまでを一般にターンオーバーと呼び、およそ1.5~2か月をかけて皮膚は再生を繰り返し、全ての細胞が入れ替わります。
表皮の最も内部にあたる基底層には、メラニン細胞があります。メラニン細胞は紫外線の刺激によってメラニン色素を作り出し、基底層で分裂を繰り返している細胞の核(DNA)を守る働きがあります。
表皮の最も外側にある角層は角質細胞がレンガのように積み重なっていて、体内の水分が失われるのを防ぎ、外からの刺激から守るバリアのような働きがあります。アトピー性皮膚炎ではこのバリア機能に異常があるため、外界からの異物が皮膚から侵入してしまい、刺激によって炎症がおこりやすい状態になっていると考えられています。
真皮の構造と働き
真皮は表皮のすぐ下にあり、表皮に近い部分から乳頭層→乳頭下層→網状層の3層からできています。真皮には、温度や痛みなどを感じる刺激センサーとなる神経があります。発汗によって体温調節をしたり、寒いときには立毛筋が収縮して鳥肌が立ったりします。また血管が走行しており、表皮へ酸素や栄養の補給を行い、皮脂腺や汗腺から皮脂や汗を分泌して皮膚の表面に皮脂膜を作って皮膚を保護します。
皮下組織
皮下組織は皮膚の最も下にある脂肪を含んだ組織で、血管や神経、汗腺などを保護し、真皮と表皮を支えています。
皮下組織では外部からの衝撃を和らげるクッションの役目や、体温を保持する保温機能も果たしています。またエネルギーを脂肪として蓄えておくのも皮下組織の役割です。
皮膚にいい栄養素と食べ物
健康な皮膚を保つためには、規則的でバランスの良い食事が不可欠です。その中でも特に皮膚にいい栄養素と、それを含む食べ物について知っておきましょう。
たんぱく質
たんぱく質は臓器や筋肉、皮膚や毛髪、爪など、体を作る材料となります。人の体は約10万種類のたんぱく質から構成されています。たんぱく質は20種類のアミノ酸からできていますが、20種類のアミノ酸のうち9種類は体内で作ることができない必須アミノ酸で、食べ物から摂取しなくてはなりません。
1日に必要なたんぱく質の量は、体格や運動量などによって個人差がありますが、体重1㎏あたり1gが目安といわれます。
たんぱく質は肉や魚、卵、乳製品などの動物性の食品と、大豆・大豆製品に多く含まれていますが、効率よくたんぱく質を摂るにはアミノ酸スコアに注目しましょう。アミノ酸スコアとは、食品に含まれているアミノ酸のバランスを数値で示したものです。バランスの最高値が100で数値が高いほどアミノ酸がバランスよく含まれているといえます。
< 主な食品のアミノ酸スコア >
動物性食品 | 植物性食品 | ||
豚肉(ロース) | 100 | 大豆 | 100 |
牛肉(ロース) | 100 | 納豆 | 100 |
鶏肉(ロース) | 100 | 豆乳 | 100 |
アジ(生) | 100 | 玄米 | 64 |
イワシ(生) | 100 | じゃがいも | 73 |
鮭(生) | 100 | 玉ねぎ | 51 |
鶏卵 | 100 | トマト | 51 |
牛乳 | 100 | りんご | 56 |
アミノ酸スコアが高いのは、肉や魚、卵などの動物性食品と大豆・大豆製品ですが、偏った食材からのたんぱく質摂取は、その他の栄養素の過不足を招きます。たんぱく質に限らず、栄養のバランスを整えるには、さまざまな食品を選んで摂るように心がけましょう。
コラーゲン
コラーゲンもたんぱく質の1種で、多くの種類があります。コラーゲンは皮膚だけではなく、骨や血管など体全体のあらゆる部分に存在しています。コラーゲンは肉のスジや軟骨部分に多く含まれています。コラーゲンは分子が大きいため、食物から摂ったコラーゲンがそのまま直接皮膚に作用するとはいえませんが、体内でいったん分解され、コラーゲンとして再合成されることで効果が発揮されます。またコラーゲンは、コラーゲンペプチドの形で摂取すると皮膚の水分保持能力が高まることがわかっています。
日本ゼラチン・コラーゲン工業組合のウェブサイトです。コラーゲンペプチドについて詳しく説明されていますのでご参照ください。
https://www.gmj.or.jp/collagen/collagen-peptide.html
ビタミンA
ビタミンAには皮膚のターンオーバーを高める作用があるといわれています。またコラーゲンの合成促進やヒアルロン酸の分泌促進などの作用があり、皮膚のハリや弾力を保つ役割もあるといわれます。
ビタミンAの不足は鉄欠乏性貧血の悪化を招く可能性があり、さまざまな皮膚のトラブルの原因となることがあります。
ビタミンAはレバー、ウナギ、チーズ、卵、緑黄色野菜などに多く含まれています。
ビタミンB6
ビタミンB6はたんぱく質の代謝に不可欠であり、皮膚の健康にも欠かせない栄養素です。
ビタミンB6が不足すると脂漏性皮膚炎や湿疹などの症状が出やすくなることがあります。カツオやマグロ、牛レバーなどに多く含まれていますが、バナナにも比較的多く含まれていて、手軽にビタミンB6が補給できる食材といえます。
ビタミンC
ビタミンCはメラニン色素の合成を抑制し、皮膚の色素沈着を改善する効果が期待できます。また体内でコラーゲンの合成を助け、ターンオーバーを正常化します。ビタミンCは体内で合成することができないため、食品から摂取しなくてはなりません。野菜や果物などに広く含まれていますが、ビタミンCは壊れやすく、現代のストレス社会では消費量が増加している懸念もあり、意識的に摂りたい栄養素のひとつといえます。
ビタミンE
ビタミンEには血行促進や保湿効果が期待できます。また抗炎症作用によって体内の脂質を酸化から守り、細胞の健康を維持する効果があると考えられます。ビタミンEはゴマやナッツ類に多く含まれています。
鉄
鉄分が不足するとヘモグロビンが合成できないため、鉄欠乏性貧血に陥ります。貧血では酸素や栄養素が十分にいきわたらないため、皮膚の健康にも悪影響を及ぼします。肉や魚には多く含まれていますが、レバーには特に多くの鉄が含まれており、吸収率も良く効率的に鉄を摂取することができます。またビタミンCは鉄の吸収を促進するため、一緒に摂ると効率的といえます。
亜鉛
亜鉛は細胞分裂や細胞の増殖に不可欠です。そのため、亜鉛不足によって皮膚のターンオーバーに不調がおきる可能性があります。亜鉛は皮膚のかゆみや慢性湿疹にもかかわっていると考えられており、皮膚の健康には欠かせない栄養素といえます。また亜鉛は、レチノールをレチナールに変換するときの酵素として必要であることから、亜鉛が不足するとビタミンAの代謝も阻害すると考えられます。
亜鉛は肉や魚に多く含まれており、通常の食事では不足しにくい栄養素であるといわれています。しかし動物性の食品を食べない食習慣のある場合や、添加物を含む加工食品やレトルト食品に偏った食生活の場合に、不足するリスクがあるといえます。
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皮膚にいい食べ物とレシピ
皮膚にトラブルがおきたとき、改善を促すために皮膚にいい食べ物とレシピを紹介します。
ニキビ・吹き出物
1日3食規則的な食事を心がけましょう。皮膚の材料となるたんぱく質と、皮膚のターンオーバーを適切にコントロールしたり、皮脂量を調整する働きがあるビタミンB群を積極的に摂りましょう。ビタミンB群はB1、B2、B6などがチームとなって働きます。ビタミンB1は豚肉や玄米、ビタミンB2は卵や納豆、ビタミンB6はマグロやカツオ、鮭、肉類に多く含まれます。便秘もニキビや吹き出物などの原因となることがあります。便秘の改善に役立つ食物繊維も積極的に摂りましょう。食物繊維はいも類や野菜、海藻、きのこ類に多く含まれます。同様にヨーグルトやキムチなどの発酵食品は腸内環境を整え、便秘の改善に役立ちます。
< ゆで豚のボリュームサラダ >
・材料(1人分)
豚ロースしゃぶしゃぶ用 50g
ミックスビーンズ 30g
キャベツ 大きめの葉 1枚
玉ねぎ 1/4個
乾燥わかめ 1~2g
白すりごま 適量
お好みのドレッシング 適量
・作り方
1.キャベツは食べやすい大きさにちぎっておきます。玉ねぎはスライスしておきます。
2.乾燥わかめはたっぷりの水で戻しておきます。
3.鍋にお湯を沸かし、初めにキャベツを茹でます。しんなりしたらお湯からとって、ザルで水を切っておきます。
4.同じお湯で豚肉を茹でます。お湯に1枚ずつ入れ、色が変わったらとりだします。キャベツと同様にザルに入れて水気を切ります。
5.お皿に玉ねぎ、水気をきったわかめとキャベツ、豚肉を盛り付けて、白すりごまをトッピングします。
6.食べる直前にドレッシングをかけでできあがりです。
皮膚の乾燥
アミノ酸や尿素などの天然保湿因子(NMF)やセラミドなどの細胞間脂質、皮膚の表面をおおって乾燥を防ぐ皮脂などの分泌が減少し、角層の水分が減少することで、皮膚のかさつきやかゆみ、ひび割れなどの症状があらわれます。空気の乾燥や紫外線によるダメージ、加齢などの要因の他に、皮膚の洗いすぎ、熱いお湯での入浴や不規則な生活、心身の過剰なストレスなども皮膚の乾燥を助長するといわれます。
ビタミンAは皮脂腺の機能を改善して皮膚の水分保持を助ける働きがあります。卵やレバーの他に、緑黄色野菜に含まれるβカロテンもビタミンAに変換されて作用します。また、良質の油脂を適量摂取することも皮膚の乾燥を防ぐためには必要です。オリーブオイルに含まれる一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸は、抗酸化作用が強く活性酸素の生成を抑えて、皮膚の乾燥を防ぐ効果が期待できます。
< 緑黄色野菜のサラダ >
・材料(1人分)
かぼちゃ 50g
にんじん 20g
ブロッコリー 30g
ミニトマト 2~3個
カッテージチーズ 大さじ1
スライスアーモンド 適量
オリーブオイル 大さじ1
ポン酢 大さじ1
にんにく(なくても可) 小1/2かけ
・作り方
1.かぼちゃ、にんじん、ブロッコリーは洗って食べやすい大きさに切り、それぞれ電子レンジでやわらかくなるまで加熱します。ミニトマトは横半分に切っておきます。
2.野菜をお皿に盛り、カッテージチーズとスライスアーモンドをトッピングします。
3.オリーブオイルとポン酢、すりおろしたにんにくをよく混ぜ、食べる食前にかけてできあがりです。
皮膚のシミ
シミはメラニン色素が沈着して、皮膚にできる褐色の斑点です。シミにはいくつかの種類がありますが、その原因は紫外線や加齢などの他に、遺伝が関与している場合や皮膚炎など肌の炎症、ホルモンバランスの乱れなどが原因となるシミもあります。
トマトに含まれるリコピンは皮膚のシミ改善にも効果が期待できます。健康な日本人の成人を対象に紫外線照射実験を行ったところ、リコピンを摂取したグループは非摂取グループよりも紫外線による皮膚の色調回復が良好であるとの結果が得られ、紫外線によるシミに対して予防・改善の効果が期待できるといえます。
また、鮭やエビ・カニなどに多く含まれているカロテノイドの一種であるアスタキサンチンは、非常に強い抗酸化作用を持つことがわかっています。マウスを使った実験では、アスタキサンチンを摂取することで紫外線によって皮膚の真皮に発生した活性酸素を除去する効果が確認されており、紫外線によるさまざまな皮膚への影響を軽減する効果があると考えられます。
< 鮭のトマトソースパスタ >
・材料(2人分)
生鮭切り身 2枚
塩・コショウ 適量
オリーブオイル 大さじ2
ニンニク 1かけ
玉ねぎ 1/4個
トマトホール缶 1缶
塩・コショウ 適量
パスタ 200g
パセリ 適量
・作り方
1.鮭は大きめのひと口大に切り、塩・コショウをしてオリーブオイル(分量外)で両面を焼き、取り出しておきます。
2.同じ鍋にオリーブオイルとみじん切りにしたニンニクと玉ねぎを弱火で炒めます。
3.香りが出たらトマトホール缶を入れて煮込み、塩・コショウをして味を整えます。トマトの酸味が強い場合は、砂糖ひとつまみ(分量外)を加えると、酸味が和らぎます。
4.鮭をトマトソースに戻してひと煮立ちさせたらソースのできあがりです。
5.パスタを袋の表示通りに茹でてソースをかけ、きざんだパセリをトッピングしてできあがりです。
皮膚の健康と食べ物まとめ
皮膚の健康を保つには、規則的な生活とバランスの良い食生活が基本です。さらに皮膚にいい食品を意識的に摂ることで、皮膚のトラブルを予防して健康な皮膚を保ちましょう。