
腸閉塞とは?
腸閉塞は、様々な原因で小腸や大腸に内容物が詰まってしまう病気です。腸が詰まってしまうことで、通過出来ない内容物が溜まるためお腹の痛みや張り、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。腸閉塞は場合によっては緊急手術が必要となることがあります。
お腹の手術をした方は腸閉塞になりやすく、その確率は50~90%ととも言われています。多くは術後当日から1~2週間で癒着が始まり、数ヶ月~2~3年後に腸閉塞となることがありますが、稀に10年以上経ってから発症する方もいます。近年では術後管理は進化しているため、重症化することは少なくなっていますが、時には命に関わることもあるため、症状を見逃さずに早期に治療を開始することが大切です。また、腸閉塞は繰り返して発症してしまうことが多く、腸閉塞の治療を受ける度に再発しやすくなる、という特徴があります。.
腸閉塞の種類は?
◇機械的腸閉塞
物理的に腸が閉塞することで起こる腸閉塞です。
・閉塞性腸閉塞:癒着や腫瘍など腸の内腔を閉塞するもの。
・絞扼性腸閉塞:腸捻転や鼠径ヘルニア嵌頓などで腸がねじれたり、血行を障害されるもの。
◇機能的腸閉塞
腸管の運動が停止して起こる腸閉塞です。
・麻痺性腸閉塞:腸の動きが麻痺して起こる
・痙攣性腸閉塞:腸の一部が痙攣して起こる
腸閉塞の原因は?
物理的に閉塞する場合の腸閉塞では、お腹の手術歴が原因となることが多いです。手術をすると、傷が治っていく過程で癒着といって他の組織や臓器の表面とくっついてしまうことがあります。癒着により腸管が閉塞してしまうことで腸閉塞となってしまうのです。大規模なお腹の手術ほど癒着を起こしやすく、特にがんの患者には癒着が多くなる傾向があることが分かっています。
また、腸の一部がねじれることで起こる腸閉塞もあり、寝たきりの高齢者や慢性的な便秘、薬物の影響などでS状結腸が弛み、ねじれてしまうことで起こります。さらに鼠径ヘルニアといって、腸管の一部が足の付け根からはみ出る病気も腸が閉塞する原因となります。鼠径ヘルニアを治療せず放置していると、押しても腸が元の位置に戻らなくなってしまうことがあり(嵌頓状態)、腸閉塞となることがあります。はみ出た部分の血流が途絶えてしまうため、非常に危険な状態です。
腸が閉塞していないのに、腸の運動が停止してしまい、内容物が流れなくなる状態の腸閉塞では、感染性腸炎や腹膜炎、お腹の手術歴、薬の副作用などで腸管が麻痺してしまうことが原因で起こります。腸管の一部が痙攣することで起こる腸閉塞もあります。こちらは頻度は少ないですが、虫垂炎や胆石症、腎結石の発作時、お腹の打撲や鉛中毒などが原因となります。
腸閉塞の治療方法は?
腸閉塞の治療は軽度の場合には手術は行わずに、保存療法が適用となります。保存療法では、食事や飲水を中止して腸を休ませ、チューブを鼻から腸まで挿入します。チューブを鼻から挿入するのは、腸の中で詰まって先に進まなかった内容物がチューブを介して体外へ流出し、腸の中は減圧されるためです。減圧により腸管の腫れが治まると、閉塞状態が改善します。保存療法でも基本的に入院が必要です。
保存療法を1週間程度継続しても効果がない場合、また絞扼性腸閉塞の場合には腸の血流が遮断され壊死してしまう危険性があるため、手術の適応となります。閉塞性腸閉塞の場合には閉塞の原因が腫瘍であれば腫瘍を取り除いたり、癒着が原因であれば癒着している部分を剥がす、もしくは腸管の損傷具合を見て切除することもあります。絞扼性腸閉塞では腸管がねじれたり、はみ出たりして血流が遮断されている部分を修復します。腸管が壊死してしまっている場合は、一度壊死した腸管は元には戻らないため切除する必要があります。
腸閉塞手術後の食事の注意点とは?
お腹の手術歴があると、術後数年経過していても腸閉塞を発症することがあります。食事に注意していても完全に防ぐことはできませんが、できるだけ腸閉塞を起こさないように工夫することが必要となります。
腸閉塞の手術をした場合には、手術の程度(腸管の切除の有無、切除部位や範囲)などによっても食事のすすめ方が異なりますので、食事の形態や食べても問題ない食品かどうか主治医に確認し、段階的に食事形態や食事量を上げていきましょう。
・一度に大量に食べない
→腸管が狭窄することで起こる腸閉塞では、一度に大量に食べると消化しきれずに腸が詰まってしまうことがあります。退院後は2ヶ月ほどかけて段階的に量を増やして、1回の食事量は腹8分目程度を目安としましょう。
・早食いをしない
→早食いも腸に大量に食べたものが流れ込むため詰まりやすくなる原因となります。食事はゆっくりよく噛んで食べましょう。
・手術後1~2ヶ月程度はなるべく軟らかいものを食べる
→手術後は軟らかいお粥やうどんなど消化しやすいものを食べるようにしましょう。手術後3ヶ月程度かけ体調をみながら徐々に油を使った料理や繊維質の食品など、少量ずつから食べ始めていきましょう。
・ガスが発生しやすい食品や、刺激が強い食品は控えめにする
→手術後はお腹が張りやすくなったり、便通が変化しやすくなります。そのため、ガスが発生しやすくなるにんにくや炭酸飲料、腸を刺激する香辛料やアルコールは控えめにしましょう。
・食物繊維が多い食品を多く摂らない
→便秘に効果的な食物繊維ですが、腸閉塞の手術をしている方は要注意です。繊維質は消化されにくいため、詰まりやすくなってしまいます。ごぼうやセロリ、さつまいもや山菜など繊維が多い食材は量を控えめにし、調理の際は皮や筋を取り除き、繊維を断ち切る方向に細かく切って食べるようにしましょう。みじん切りにしてしまうと丸飲みしてしまう恐れがあるため、噛める大きさに切り、良く噛むことが大切です。
また、豆類も繊維が多く腸に腸に詰まりやすい食品です。納豆はひき割りにしてご飯と別に食べたり、煮た大豆や枝豆は薄皮を取り除いてから食べるようにしましょう。
・便秘予防に水分をこまめに摂る
→繊維質を控えると便秘になりやすくなります。水分をこまめに摂ることで便が硬くなることを防ぎ、腸の運動を促します。
・食事はバランスよく、消化吸収がしやすいものを中心に摂取する
→消化の悪い食品を食べ過ぎると腸が詰まりやすくなります。消化しにくい食品は食べる量を控えめにし、細かくきざんだり、柔らかく煮込んだりなど調理法を工夫しましょう。
<食品の選び方>
種類 | 消化に良い食品 | 控えた方が良い食品 | |
たんぱく質 | 肉類 | 牛赤身肉、豚赤身肉、鶏肉(皮は取り除く)、鶏ささみ、レバーなど | 脂肪の多い肉(牛・豚バラ、ロース、霜降り肉、ベーコン)など |
魚類 | 白身魚、アジ、エビ、貝柱、練り製品 | いか、たこ、干物など | |
卵 | 鶏卵、うずらの卵 | ||
豆類 | 豆腐、高野豆腐、こしあん、 ひき割り納豆など | 大豆、小豆、つぶあん、おから | |
乳製品 | 牛乳、チーズ、ヨーグルトなど | ||
糖質 | 穀類 | 軟飯、お粥、食パン、うどん、 マカロニ、スパゲティなど | 玄米、赤飯、ラーメン、とうもろこしなど |
芋類 | じゃがいも、里芋、長芋 | さつまいも、こんにゃくなど | |
果物 | りんご、もも、バナナ、缶詰類など | パイナップル、みかん、柿、干し柿、ドライフルーツなど | |
脂質 | 油脂 | バター、マーガリン、マヨネーズ、食物油 | ラード、油の多いドレッシング、油の多い料理(揚げ物、中華料理)など |
ビタミンミネラル | 野菜 | 緑黄色野菜:かぼちゃ(皮なし)、人参、ほうれん草、小松菜、トマト(皮なし)など 淡色野菜:大根、キャベツ、レタス、きゅうり、玉ねぎ、なす(皮なし)、かぶ、白菜など |
硬い繊維の野菜(ごぼう、たけのこ、レンコン、山菜、セロリなど) きのこ類、漬物など |
海藻 | のり佃煮 | わかめ、昆布、ひじきなど | |
その他 | 飲料・菓子 | ビスケット、ゼリー、プリン、カステラ、米菓子、ウエハースなど | アルコール飲料・炭酸飲料・コーヒーなど 揚げ菓子、チョコレート、生クリームの多いケーキなど |
腸閉塞の食事まとめ
腸閉塞手術後の食事は、バランス良く規則正しい食生活を基本に、食品の選び方や調理法を工夫することが大切です。また、お腹の手術歴がある方も同様に普段から食事の摂り方に注意していく必要があります。
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参考:日本消化器外科学会 イレウスの治療と予防
https://www.jsgs.or.jp/cgi-html/edudb/pdf/20101065.pdf